ピント

ピントとボケ

一般に一枚の写真の中で像が鮮明に写る部分は一部分で,そのほかの部分はそれよりぼやけたように写ります.写したいものがきちんと鮮明に写っている状態を「ピントが合っている」といい,意図しないところにピントが合っていたり,ピントが合っている部分が全くない状態を「ピンボケ」と呼びます.ピントが合っていない部分は「ボケている」と言われ,この「ボケ方」「ボカシ方」も重要な写真表現の1つとされています.

右目にピントを合わせた猫の写真

カメラでは,一般的にフィルム面と平行な平面にピントが合う仕組みになっています.例えば平らな絵画のような被写体を写した場合,絵画の上から下まで,右から左まで全体にピントを合わせることは(理想的なレンズでは)可能ですが,逆に人間のような凹凸のある被写体を撮影する場合,仮に目にピントを合わせると,それより手前にある鼻や,奥にある耳には原理的にピントは合いません.

ピント合わせ

被写体の像が出来る位置は,焦点距離と,レンズから被写体までの距離によって変わります.レンズと被写体の距離が近ければレンズと像の距離は逆に長くなり,被写体がレンズから離れるほど像はレンズに近づきます.そして被写体が無限遠の位置にあるときに像が出来る位置が焦点距離fであることは,焦点距離の項目で説明した通りです.そしてこの像がきちんとセンサーの位置に出来ると,「ピントが合う」のです.言い換えれば,焦点距離やレンズと被写体との距離の変化に応じてレンズとセンサーとの距離を調節し,像ができる位置にセンサーを配置することがピント合わせです.またレンズとセンサーとの距離を固定して,レンズと被写体との距離か,焦点距離を変えることによってピント合わせをすることも可能です.

$O$ $A$ $B$

図:ピント合わせ

点$O$が結像する場所$B$から離れた場所$A$にセンサーが置かれていたとき,点$O$の像はセンサー上で広がった,つまりぼやけた像になります.このぼやけた像の事を錯乱円と呼びます.この錯乱円の大きさを最小にする位置,図では位置$B$にセンサーが置かれるようにレンズとセンサーの位置関係を変更することがピント合わせです.

ここでは簡単のために1枚の凸レンズで説明していますが,実際の写真レンズは多数のレンズが組み合わさって出来ています.一枚の凸レンズでピントをあわせるには,レンズとセンサーの距離を変える以外の方法はありませんが(一応,レンズと被写体の距離を変える方法もあります),写真レンズでは焦点距離を変えることもできます.実際のカメラでは複数枚のレンズから構成される写真レンズのうち,一部もしくは全部のレンズを動かし,主点や焦点距離を変えることでピント合わせをしています.レンズによってピント合わせの方法は異なり,レンズとセンサーとの距離,焦点距離の両方を変化させてピント合わせをしているレンズもあります.

ピント合わせと画角

画角の項で触れたように,ピント合わせによっても画角は変化します.これまで解説では,レンズを一枚の凸レンズで模式的に表していました.ピント合わせをこのレンズで行うには,レンズとセンサーとの距離を変化させれば良いのですが,そうするとレンズとセンサーの距離は画角の項で解説した図のfよりも長くなり,画角は狭くなります.つまりピントを合わせる被写体が近ければ近いほど,画角は狭くなります.

ところが実際には,ピント合わせるにはレンズとセンサーの距離の調節のほか,焦点距離の調節でも行えます(例えば焦点距離を長くすると遠くの被写体にピントが合います).そのため画角の変化も必ずしも上記の通りでは無く,レンズによっては被写体が近づくほど画角が広くなるものもあります.

レンズの構造によって変わってくるのでピント合わせで画角がこう変わる,という単純な回答はないのですが,ただ言えることは,その変化量はさほど大きくないので,マクロ撮影などの場合を除いてあまり考慮に入れる必要はないでしょう.

ピントとボケ余談

「ピント」の語源はオランダ語のbrandpunt(直訳すると「燃える点」,つまり焦点のこと)といわれています.puntは英語のpointに相当し,これが転訛してピントになったようです.ピントを合わせることはつまり,(被写体が無限遠にある場合は)焦点をフィルムの位置に合わせることですから,ピントが合うことを「brandpuntが(フィルムに)合った」,と表現していたのではないでしょうか.

「ボケ」はもちろん日本語ですが、英語圏でも写真におけるボケのことは日本語が輸入されてボケ(boke, bokeh)と呼ばれています.一般的なボケていることを表す英語はblurで、ブレのことはmotion blurと呼びますが、いわゆる「ボケ」についてはbokehが使われています。

参考サイト

デジカメWatch で豊田堅二先生による連載 カメラ用語の散歩道 が始まり(2020/11/09)、その第1回がピント合わせでした。豊田先生の記事は非常に分かり易くためになるので、他の連載も是非ご一読されることをおすすめします(このサイトの存在意義がだいぶ薄れるかも知れませんが・・・)。

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